求められる指導者像
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求められる指導者像
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認知症介護指導者(以下、指導者と呼ぶ。)は、これまで、日本の認知症施策に関わってきており、認知症ケア向上の推進に少なからず寄与できたとすれば、指導者としての喜びと誇りとするところであります。 認知症施策や社会的ニーズの増大により、さらに指導者の役割が期待されております。しかしながら、指導者には自分の役割や専門性について自信を持てず不安を抱いている人もおります。一方、指導者研修を受けただけで、使命感や倫理観が希薄で、指導者として役割を十分認識できずに活動している人もおります。 ついては、超高齢社会にあって様々な社会的ニーズに応えことのできる社会的責任と社会貢献が指導者に求められており、認知症介護指導者ネットワークは3センターと協力し「求められる指導者像」を策定することとしました。 策定の趣旨は、指導者研修受講生には、「求められる指導者像」を明示することにより、これからの活動の方向性と、地域で活動するための心構えを、今、活動している指導者には、困った時、悩んだ時の指針とし、さらに、指導者の役割を社会に明示しアピールすることで認知度を高め、地域の様々な認知症等に関わる活動をサポートし、「求められる指導者像」の実践により、認知症の人が尊厳を保持し、だれもが安心して暮らすことのできる地域づくりに貢献することにあります。 |
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前 文 | |
私たちは、認知症の人がこれまで生きてきた価値観に基づく自律性を尊重し、一人ひとりがかけがえのない存在として在るその重さを自覚し、今この時をともに生きるもの同志がお互いのその人となりを尊重し尊厳ある存在として生きることができる権利を擁護する視点を持ち、少子高齢化に伴う保健医療福祉サービスの実践理念に基づき、認知症(全ての人)の人の自立と尊厳を守るための人材育成および地域づくりを促進していくことが求められております。私たちは認知症の理解の促進、地域や事業所内におけるリーダー養成など実践者の育成、地域で安心して暮らせる仕組みづくりなど、当事者のニーズを中心とした認知症ケアの平準化を図る社会的責任が求められております。 また、私たちは求められる役割の中に個々のアイデンティティを確立し、介護保険制度を基盤としたインフォーマルな社会資源を含めた生活支援を組み立て連携体制構築の推進など地域づくりに貢献することが求められております。 私たちは、求められる指導者像として、下記の項目の実践により、指導者としての社会的責任と社会貢献を果たすものであります。 |
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1 | 法令遵守により認知症の人の尊厳を守る(コンプライアンス) |
私たちが提供する制度に基づくサービスは、社会との関係において、信頼性、誠実性、専門性が求められ、サービス利用者の最善の利益を考え業務に携わり、決して不利益や害を与えることがあってはならないものです。行為規範は、制度に基づく規定とともに施設や事業所における定款や服務規程、基本理念、業務指針も含くむものであり、私たちは秩序を乱すなど社会から非難される行動を慎み、社会的信頼が得られるようコンプライアンスに努めます。 | |
2 | 人材育成に求められる指導者としての規範(指導者としての倫理) |
私たちは、研修等の人材育成に関わる際、倫理的視点に則り講義資料の作成を行い、引用や出典について著作権を侵害することのないよう注意しなければならないものです。また、講義・演習は、指導者の介護現場における実践や経験が活かされたものとなるよう心がけ、実践者研修のカリキュラムに基づき指導者間の連携を図り、研修の初期の目的である認知症介護の質の向上が達成できるよう努めます。 | |
3 | 認知症介護指導者に求められる5つの役割(専門性) |
私たちは、認知症の人が主体的に社会に参画し、住みなれた地域で共に安心して暮らすことのできる地域を構築するために、3センターや指導者間のネットワークによる認知症介護の知識・技能の研鑽を継続的に図り、指導者に求められる5つの役割を念頭に置きながら、指導者としての専門性や技能を活用し認知症介護実践研修を始めとした各種研修会で人材育成を担うと共に、地域連携や認知症施策の推進に努めます。 | |
<プランナー> | |
指導者は、国の認知症施策や認知症介護実践研修等の目的・意義の理解のもと、「認知症の人が住み慣れた地域で、安心して暮らせる地域づくり」という認知症介護理念を念頭に置き、指導者と関係機関の協働により認知症に関わる受講者・本人・家族・地域などのニーズを把握し、認知症介護への人を大切にするという思いが伝わる、効果的な(受講しやすい環境・魅力ある内容など)講義・演習を企画・立案します。 |
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<トレーナー> | |
指導者は、認知症介護実践研修等の講義・演習を行うトレーナーとして、常に認知症の人の自己決定や権利を擁護する視点を持ち、向上心と自己研鑽を怠ることなく高い倫理観を持ち真摯に介護実践に取り組み、言葉の持つ意味を大切にして、受講者に謙虚な姿勢で向き合い、受講対象者に応じた講義・演習を展開すると共に、ファシリテーターとして演習が円滑かつ効果的に行われるよう助言や指導に努め、受講者の潜在する力を引き出します。 | |
<スーパーバイザー> | |
指導者は、スーパービジョンの考えのもとに、バイジーとの信頼関係を構築し、常に受容と共感の姿勢を保ち、コーチングなどのテクニックを用いながら、適切な専門職の育成を行い、また、職場や地域、関係機関等において、日々の実践から認知症介護の質の向上に向けてのスーパーバイズ(支持・教育・評価)やアドバイス(助言)を行い、協働します。 | |
<コーディネーター> | |
指導者は、様ざま地域資源、行政等との連携をはかりながら、ネットワークを構築し、認知症の人が安心して暮らせる地域づくり及び認知症施策の推進に努めると共に、認知症の人が主体的に社会に参画し、認知症の人がひとりの人としての存在価値を高め、生活の質の向上と権利擁護が図れるような支援を考えてコーディネートします。 | |
<インタープリター> | |
指導者は、単に認知症や認知症ケアにおける知識や情報を伝達又は教育するだけではなく、認知症介護の変遷を踏まえ、認知症の施策や認知症の人とその家族も含め、現在置かれている認知症の人の状況を全人的に理解し、認知症の人の権利を擁護する視点を持ち声なき声を社会に知らしめ、認知症の人が安心して地域で暮らすことのできるように啓発します。 | |
4 | 認知症介護の実践者として(自己研鑽) |
私たちは、認知症の人の「人間としての尊厳」や「その人らしく生きる」というかけがいのない人生を、その人の身体的・精神的(心理的)・社会的状況やリスクを理解し、全人的な関わりにより権利を擁護するケアの実践が求められることから、日進月歩で進化する認知症に関する知識、技術、価値倫理の習得のみならず、保健・医療・福祉サービスにおいて医療と介護の連携の促進とともに、地域にある生活課題やニーズに応えることのできる実践者となれるよう自己研鑽に努めます。 | |
5 | 認知症の人が安心して暮らすことのできる地域に向けて(地域支援) |
私たちは、超高齢化しているそれぞれの地域において、地域力が低下し、互いに支え合い見守る機能が衰退する中で、とりわけ地域に暮らす認知症の人への無理解による偏見や差別により虐待などの人権侵害を受けることなく安心して暮らすことのできる地域とするために、地域の社会資源の発掘や住民・行政・医療・保健・福祉関係者が有機的に連携したネットワーク構築の推進を図り、また認知症の病気の理解や認知症介護の正しい知識の普及啓発など情報発信に努めます。 |